清水エスパルス 2013シーズン総括
◆成績
順位 勝点 勝 引分 敗 得点 失点 得失点差
9 50 15 5 14 48 57 -9
◆選手別出場データ
■GK
1 林 彰洋 →鳥栖へ期限付き移籍
出場試合14(14) 出場時間 1,343 失点数22 イエロー1(0) レッド0
21 櫛引 政敏
出場試合20(20) 出場時間 1,933 失点数35 イエロー1(0) レッド0
31 髙原 寿康
出場試合0(0) 出場時間 0 失点数0 イエロー0(0) レッド0
36 三浦 雄也
出場試合0(0) 出場時間 0 失点数0 イエロー0(0) レッド0
■DF
2 イ キジェ
出場試合17(16) 出場時間 1,503 ゴール数1 イエロー5(1) レッド0
3 平岡 康裕
出場試合30(30) 出場時間 2,838 ゴール数5 イエロー1(0) レッド1
4 ヨンアピン
出場試合26(26) 出場時間 2,509 ゴール数1 イエロー8(0) レッド0
5 村松 大輔
出場試合33(33) 出場時間 3,141 ゴール数4 イエロー3(0) レッド0
25 犬飼 智也 →長野へ期限付き移籍
出場試合0(0) 出場時間 0 ゴール数0 イエロー0(0) レッド0
27 廣井 友信
出場試合3(0) 出場時間 27 ゴール数0 イエロー0(0) レッド0
28 吉田 豊
出場試合28(25) 出場時間 2,292 ゴール数1 イエロー7(0) レッド0
29 三浦 弦太
出場試合2(0) 出場時間 36 ゴール数0 イエロー0(0) レッド0
30 岡根 直哉
出場試合3(1) 出場時間 72 ゴール数0 イエロー2(1) レッド0
■MF
6 杉山 浩太
出場試合30(29) 出場時間 2,781 ゴール数1 イエロー8(0) レッド0
7 八反田 康平
出場試合6(2) 出場時間 285 ゴール数1 イエロー0(0) レッド0
8 石毛 秀樹
出場試合32(24) 出場時間 2,291 ゴール数2 イエロー1(0) レッド0
10 河井 陽介
出場試合32(30) 出場時間 2,686 ゴール数1 イエロー4(1) レッド0
16 六平 光成
出場試合7(4) 出場時間 371 ゴール数0 イエロー0(0) レッド0
17 藤田 息吹
出場試合0(0) 出場時間 0 ゴール数0 イエロー0(0) レッド0
18 イ ミンス
出場試合4(3) 出場時間 285 ゴール数0 イエロー1(0) レッド0
20 竹内 涼
出場試合26(17) 出場時間 1,545 ゴール数0 イエロー1(0) レッド0
22 内田 健太
出場試合2(1) 出場時間 102 ゴール数1 イエロー0(0) レッド0
34 高木 純平
出場試合7(3) 出場時間 329 ゴール数0 イエロー0(0) レッド0
35 村田 和哉 →シーズン途中加入
出場試合23(1) 出場時間 618 ゴール数1 イエロー0(0) レッド0
37 金子 翔太 →特別強化指定
出場試合0(0) 出場時間 0 ゴール数0 イエロー0(0) レッド0
38 本田 拓也 →シーズン途中加入
出場試合15(15) 出場時間 1,339 ゴール数0 イエロー5(0) レッド0
■FW
9 バレー →天津泰達(中国)へ移籍
出場試合16(16) 出場時間 1,525 ゴール数4 イエロー4(0) レッド0
11 瀬沼 優司
出場試合9(1) 出場時間 271 ゴール数0 イエロー1(0) レッド0
13 高木 俊幸
出場試合30(20) 出場時間 1,762 ゴール数6 イエロー3(1) レッド0
14 伊藤 翔
出場試合25(14) 出場時間 1,396 ゴール数6 イエロー1(0) レッド0
23 白崎 凌兵 →富山へ期限付き移籍
出場試合1(0) 出場時間 9 ゴール数0 イエロー0(0) レッド0
26 柏瀬 暁 →NYコスモス(アメリカ)へ期限付き移籍
出場試合0(0) 出場時間 0 ゴール数0 イエロー0(0) レッド0
39 ラドンチッチ →シーズン途中加入
出場試合15(15) 出場時間 1,322 ゴール数6 イエロー6(1) レッド0
50 大前 元紀 →シーズン途中加入
出場試合14(14) 出場時間 1,292 ゴール数7 イエロー2(0) レッド0
※出場試合(カッコ内は先発)、イエロー(カッコ内は1試合×2枚)
◆チーム内ランキング
■出場試合(先発)
1位 村松 大輔 33(33)
2位 河井 陽介 32(30)
2位 石毛 秀樹 32(24)
4位 平岡 康裕 30(30)
5位 杉山 浩太 30(29)
5位 高木 俊幸 30(20)
■出場時間
1位 村松 大輔 2,942
2位 平岡 康裕 2,670
3位 杉山 浩太 2,602
4位 河井 陽介 2,543
5位 ヨンアピン 2,340
■ゴール
1位 大前 元紀 7
2位 ラドンチッチ 6
2位 伊藤 翔 6
2位 高木 俊幸 6
5位 平岡 康裕 5
■アシスト
1位 河井 陽介 8
2位 高木 俊幸 5
3位 大前 元紀 4
3位 ラドンチッチ 4
5位 イ キジェ 3
■カード(1試合×2枚)
1位 ヨンアピン 8(0)
1位 杉山 浩太 8(0)
3位 吉田 豊 7(0)
4位 ラドンチッチ 6(1)
5位 イ キジェ 5(1)
5位 本田 拓也 5(0)
◆シーズン総括
振り返ると、随分と重苦しいシーズンのスタートだった。チームは開幕からリーグ戦4試合連続勝利なし(ナビスコ杯も含めると6試合連続)に加え、昨シーズン(10月)より公式戦連続11試合勝利なしという不名誉な記録を作る。そして、4月23日のナビスコ杯ではライバルの磐田に1-5という大敗をして(しかもホームで)、試合後にはサポーターが選手バスに詰め寄るという事態にまで発展した。結局、事態が収束したのは数時間後(3時間位)。周辺が暗くなってからだったと記憶している。
しかし、そこからチームは踏ん張り最終的に9位でフィニッシュできたことは素晴らしいと言えるだろう。特に、中断期間を経てからのV字回復ぶりには誰もが驚いたことだと思う。そして、その巻き返しのキーマンとなったのが夏の移籍市場で補強したラドンチッチ、本田、大前の3人だった。この3人がチームに合流(ラドンチッチが初出場したのが第18節)してからは、9勝1分7敗で、勝ち点28を稼ぐことができた(それまでの17試合は6勝4分7敗で勝ち点22)。この結果、残念ながら賞金圏内には届かなかったが2012年シーズンと同じ9位という順位で終えることができた。
◆データから見た2013シーズン
さて、ここからは脱線気味に。2013年の清水エスパルスをデータから見ると面白いことが判るので書いていく。
※ちなみに、野球は一時期ID野球というのが流行ったほどデータ化が進んでいるが、逆にサッカーほどデータで割り切れないスポーツは無いと思っているんですけど、あくまでも参考程度だけれどもそこから見えてくることもあるので。
まずはゴール。チーム内ランキングの上位選手を見ても、後半戦の巻き返しに関してはラドンチッチ、大前の加入が大きいことが判る。ラドンチッチは15試合で6点、大前は14試合で7点と、この2人で合計13得点を記録した。そして、この2人のどちらかがゴールを記録した試合(ラドンチッチ加入後の集計)は8勝2敗で勝率にすると8割。
しかし、逆に2人が揃って1ゴールもなしという試合は6試合で1勝1分5敗という成績に。これだけみても、ラドンチッチと大前の加入で攻撃面が大きく改善されたことが判る(もちろん本田の後方からの組み立て支援などもあるが、数字での直接的な反映は見えず)。その他での嬉しい記録としては、伊藤翔のブレイク。10月19日の鳥栖戦で自身初のハットトリックを達成し、シーズンを通しても6得点をあげた。出場数も25試合とキャリアハイの記録を残したのは、新シーズンに向けても大きな収穫といえるだろう。
また、攻撃面ではMF登録で伝統ある10番を背負う河井の貢献度の高さが見えてくる。チーム事情から様々なポジションをこなした。特に後半戦はSBとしての先発が大半だったが、アシスト数はチームNo1の8つを記録した。さすがは名門、藤枝東、慶応大学の司令塔としてプレーしていただけのことはある。中盤でテンポの速いショートパスの交換でリズムを作るだけではなく、距離のあるエリアからでもゴールへと繋がる術と場所を熟知している。一方で課題とされた守備に関しても徐々に改善された印象がある。特に、対面する相手への体の寄せ方、ハイボールの処理などでの駆け引きに成長が見え、サッカー頭脳の高さを感じさせた。
逆に不安となるデータは失点数。ゴトビ監督が就任して3年目でワーストとなる57失点を記録した(2012年は40失点、2011年は51失点)。これに関しては、出場試合数から見えてくるものがある。所属選手の出場試合数を見ると、30試合以上出場をした選手は6人(平岡、村松、杉山、石毛、河井、高木俊)。しかし、守備でキーとなるポジション(GK、DF)からは平岡の名前しか出てこない。登録上はDFでない選手、河井と石毛はSBで、杉山はCBでも起用されているので、もしかしたらDFというくくりにしてもいいのかもしれないが、本職ではない選手が4バックを形成している試合がかなり多かったことが分かる。その結果、失点が57にも膨らんだのではないだろうかと、このデータからは想像できる。
ちなみに前半戦と後半戦に分けて考えると、前期の失点が27、後期は失点が30という数字が出てくる。殆ど変わらない数字だと思うが、後半戦は石毛、河井という両SBが多くの試合で先発していたことを考えると大健闘したのではないだろうか。むしろ、石毛と河井に関しては前線の攻撃力にプラス要素をもたらしたと思われる(前半戦は20得点、後半戦の28得点)。それに、本来は前線で活躍するはずの選手に、不慣れなポジションでの責任を求めるのはどうか?という印象を個人的には受けるし、むしろ、問題は別のところにあると考える。
その意味では、急造の最終ラインでシーズンの多くを戦ったにもかかわらず最終的に9位という成績で終えることができたのは大きな驚きだった。勿論、起用された選手の奮闘もあったが、ポジションや先入観に囚われずに決断を下した指揮官の思い切りの良さを評価したい。しかし、リスク回避という考え方で言えば(控え選手の確保や育成なども含め)、やや博打的要素が大きかったといわざるをえない。また、怪我や累積警告による出場停止も少し影響した。
特に2CBの軸として考えていたはずのヨンアピンはシーズン中に怪我や累積警告で6試合に未出場で、吉田も怪我に加えて7つの警告を受けている。そして、イ・キジェ、は18節のFC東京戦での退場を機に出場機会を減らしていった。その結果、石毛や河井がSBで起用され、CBには杉山が中断期間中にトライすることになった。チームとしては、これらのリスク回避の必要性、更にCBの控え選手、3番手の育成という課題があったのではいかというのが、在籍選手の出場試合数から見えてくる。
その一方で、平岡、杉山、村松という出場試合数と出場時間で上位に入った3人の奮闘は評価したい。特に杉山は本職ではないCBというポジションでもチームを統率してくれただけでなく、試合後にはメディアの前に立ち質問に応える回数も多かった。敗戦後の囲み取材では常にコメントを求められる立場にあり、周囲のメディアからは『困ったときの杉山浩太』なんて言葉を聞くときもあったが、そうした中にあっても杉山は常に冷静に言葉を選びポジティブな言葉を発し続けた。その姿は、目の前に居るメディアや信頼するチームメイトだけではなく、応援してくれるサポーターに対して偽りなく実直に語りかけるのが自分の仕事だと理解した上でその役割を受けていたように思う。仕事場であるピッチを離れても、その貢献度は絶大だった。
ネガティブな要素ばかりを書いたが、裏を返せばまだまだ成長過程にチームがあるというポジティブな面が出てくる。攻撃陣に関しては、シーズン途中に加入した大前、ラドンチッチだけでなく、伊藤、高木俊が1年を通して活躍すれば強力なアタッカー陣を持つと期待できるし、SBで出場機会を増やした石毛や河井も本来のポジションでプレーした場合、どのような化学反応が起きるのか楽しみでならない。そう考えると、中盤を主戦場としている村松、本田、杉山、竹内らとのポジション争いも激化してくる。そうなれば、出樹停止や怪我などのリスクも十分回避でき、他クラブも羨むほどの分厚い選手層を揃えることになる。
しかし、一方で早急に手を入れなくてはならないのが守備陣だろう。GKは櫛引が林の穴を見事に埋めているものの、リオ五輪予選(を兼ねたアジアカップ出場によって。これは石毛も同様)で不在となる試合がでてくる可能性があるため、そこをどう対応するのか。また、最終ラインの構成も同様で。軸となるCBの補強は必要と思われる。レギュラー候補としては平岡とヨンアピンが居るが、肩の手術をした平岡の回復具合も気になる。そう考えると、彼らに次ぐ3番手か、それ以上となりうる存在の獲得が必須条件だろう。2012年にチャンスを活かせなかった選手の奮起を期待したいところだが、もう少し選手層に厚みと選択肢が欲しい。そして、SBの人選にも手をつけなくてはならない。前提としては、吉田、イ・キジェの復活は勿論。しかし、石毛、河井の起用も含め、4バックの役割をもう一度整理し、どう戦っていくのかを明確にしたい(攻撃重視なのか、守備重視なのかなど)。その意味では、チーム全体の戦い方、意思統一を図り、守備の再建が急務となりそうだ。もしかしたら、他にも新たにコンバート候補があるのかもしれないし、新戦力の補強(カナダ代表獲得の噂も報道で出てます)なども含め注目したい。
◆MVP
杉山浩太
2013年は、キャリアハイとなる30試合に出場(うち先発が29試合)。かつては病気や怪我のイメージが付きまとい、触れては壊れてしまいそうなガラスのエース三杉くんという印象もあったが、終盤戦ではCBとして獅子奮迅の活躍を見せるなどシーズンを通じて活躍した一年だったといえる。CBとしてプレーしたことも影響したのか、身体的にも強さを感じるようになった。しかも、2013年はチームの精神的支柱としての役割もしっかりと受け止めたプレーが光った。もともとその技術は言うまでもなく高レベルにあり、天才と呼ばれるサッカーセンスも健在。2014年には29歳となり、年齢的にも経験値が増え、心技体ともピークに達しようとている新シーズンは更に円熟味を増したプレーで魅せてくれそうな予感がする。