湘南ベルマーレ 2013シーズン総括
◆成績
順位 勝点 勝 引分 敗 得点 失点 得失点差
16 25 6 7 21 34 62 -28
◆選手別出場データ
■GK
1 阿部 伸行
出場試合 13(13) 出場時間 1241 失点数 27 イエロー0(0) レッド0
21安藤 駿介
出場試合 10(9) 出場時間 898 失点数 12 イエロー0(0) レッド0
27鈴木 雄太
出場試合 0(0) 出場時間 0 失点数 0 イエロー0(0) レッド0
38アレックス →シーズン途中加入
出場試合 12(12) 出場時間 1117 失点数 23 イエロー1(0) レッド1
南 翔太 →二種登録
出場試合 0(0) 出場時間 0 失点数 0 イエロー0(0) レッド0
■DF
2 鎌田 翔雅
出場試合 21(21) 出場時間 1800 ゴール数 0 イエロー2(0) レッド0
3 遠藤 航
出場試合 17(17) 出場時間 1636 ゴール数 3 イエロー2(0) レッド0
4 宇佐美 宏和
出場試合 9(8) 出場時間 823 ゴール数 0 イエロー1(0) レッド0
22大野 和成
出場試合 32(32) 出場時間 3052 ゴール数 3 イエロー3(0) レッド0
26亀川 諒史
出場試合 20(13) 出場時間 1290 ゴール数 1 イエロー3(0) レッド0
30島村 毅
出場試合 27(22) 出場時間 2144 ゴール数 2 イエロー5(1) レッド0
32クォンハンジン →群馬へ期限付き移籍
出場試合 4(2) 出場時間 266 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
37三竿 雄斗
出場試合 0(0) 出場時間 0 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
■MF
5 古林 将太
出場試合 30(26) 出場時間 2511 ゴール数 0 イエロー4(0) レッド0
6 永木 亮太
出場試合 33(33) 出場時間 3061 ゴール数 4 イエロー6(0) レッド0
7 ハングギョン
出場試合 30(30) 出場時間 2787 ゴール数 0 イエロー8(0) レッド0
8 高山 薫
出場試合 32(32) 出場時間 2928 ゴール数 4 イエロー1(0) レッド0
13岩尾 憲
出場試合 7(4) 出場時間 409 ゴール数 0 イエロー4(1) レッド0
14下村 東美
出場試合 8(2) 出場時間 315 ゴール数 0 イエロー1(0) レッド0
15岩上 祐三 →松本へ期限付き移籍
出場試合 9(1) 出場時間 219 ゴール数 1 イエロー0(0) レッド1
20猪狩 佑貴
出場試合 1(0) 出場時間 15 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
23梶川 諒太
出場試合 23(13) 出場時間 1243 ゴール数 2 イエロー1(0) レッド0
25荒堀 謙次
出場試合 2(1) 出場時間 56 ゴール数 0 イエロー1(0) レッド0
34中川 寛斗
出場試合 7(2) 出場時間 317 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
36前田 尚輝 →二種登録
出場試合 0(0) 出場時間 0 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
40大竹 洋平 →シーズン途中加入
出場試合 9(6) 出場時間 631 ゴール数 1 イエロー2(1) レッド0
■FW
9 キリノ →アル・シャアブ(UAE)へ移籍
出場試合 13(10) 出場時間 990 ゴール数 2 イエロー1(0) レッド0
9 ステボ →シーズン途中加入
出場試合 8(2) 出場時間 292 ゴール数 1 イエロー1(0) レッド0
10菊池 大介
出場試合 30(23) 出場時間 1935 ゴール数 2 イエロー4(0) レッド0
16エジバウド
出場試合 3(1) 出場時間 134 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
16ウェリントン
出場試合 16(14) 出場時間 1376 ゴール数 3 イエロー4(0) レッド0
17馬場 賢治
出場試合 7(3) 出場時間 311 ゴール数 1 イエロー1(0) レッド0
18古橋 達弥
出場試合 7(1) 出場時間 197 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
19大槻 周平
出場試合 14(7) 出場時間 556 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
28武富 孝介
出場試合 21(14) 出場時間 1134 ゴール数 3 イエロー2(0) レッド0
29吉濱 遼平 →福島へ期限付き移籍
出場試合 0(0) 出場時間 0 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
33田村 翔太
出場試合 0(0) 出場時間 0 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
35河野 諒祐
出場試合 1(0) 出場時間 13 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
39宮市 剛 →特別強化指定
出場試合 0(0) 出場時間 0 ゴール数 0 イエロー0(0) レッド0
※出場試合(カッコ内は先発)、イエロー(カッコ内は1試合×2枚)
◆チーム内ランキング
■出場試合(先発)
1位 永木 亮太 33(33)
2位 大野 和成 32(32)
2位 高山 薫 32(32)
4位 ハングギョン 30(30)
4位 古林 将太 30(26)
4位 菊池 大介 30(23)
■出場時間
1位 永木 亮太 3061
2位 大野 和成 3052
3位 高山 薫 2928
4位 ハングギョン 2787
5位 島村 毅 2144
■ゴール
1位 永木 亮太 4
1位 高山 薫 4
3位 遠藤 航 3
3位 大野 和成 3
3位 武富 孝介 3
3位 ウェリントン 3
■アシスト
1位 古林 将太 5
2位 永木 亮太 2
2位 遠藤 航 2
2位 キリノ 2
※アシストは2位上を集計
■カード(1試合×2枚)
1位 ハングギョン 8(0)
1位 永木 亮太 6(0)
3位 島村 毅 5(1)
4位 古林 将太 4(0)
4位 菊池 大介 4(0)
4位 ウェリントン 4(0)
◆シーズン総括
開幕戦では、横浜FMを相手に前半を1-1で折り返すと、後半もキリノの得点で2-1とリードした。しかし、その後は徐々に横浜FMにペースを握られ再び逆転を許し敗戦した。開幕戦での内容に手応えを掴んだ湘南は、続く第2節の鳥栖戦、第3節の清水戦では先制することに成功、その後追いつかれはしたが2戦連続で引き分け勝ち点2を積み重ねた。しかし、その後も苦しい試合展開が続く。リーグ戦では開幕から6戦未勝利(ナビスコ杯での初勝利は予選第3節の甲府戦でリーグ戦よりも先)と、なかなか勝利に恵まれなかった。それでも、どんな状況にあっても90分最後まで走り切るスタイルは上位を相手にしても見劣りをしなかった。それだけに、早い段階で結果がついてくれば…という惜しい戦況が続いた。
そんな中、怪我で離脱していた遠藤がようやく復帰。すると、第16節の甲府、第18節には川崎Fから勝利を奪い、一度は15位に浮上し降格圏を抜けた。だが、エースFWキリノのUAE移籍を経て、その後は再び降格圏へ沈んだままとなる。終盤戦、第29節にはC大阪に敗れ、そのまま連敗を続けると第32節のF東京戦での敗戦で遂に降格が決定。残念ながら、またしても1年でJ2へ戻ることになった。
◆データから見た2013シーズン
まず目につくのが…と言いたいところだが、手持ちのデータではポジティブなところを探すほうが難しい。まあ裏を返せば、そこが一番の特徴とも言える。
得点はワースト3位(甲府30、大分31、湘南34)、失点も3番めに多い(大分67、鳥栖63、湘南62)。となれば降格もやむ無しといったところだろう。しかし、それぞれの試合結果をよく見ると1点差の敗戦が11試合もある点に注目したい。これは湘南の掲げる90分間ハードワークするというチームスタイルが完全に浸透しているということの現れだろう。ほんの僅かな差、一瞬の隙を突かれての失点、そして敗戦。試合内容では相手を凌駕し善戦したのに惜しくも結果がついてこない。そういうイメージが2013シーズンで強く残るのもそのためではなだろうか。
ただ、ここにもう一つのポイントがある。労を惜しまず走ることを続け僅差のゲームを演じた反面、無失点で試合を終えたのが僅かに2試合しかない。つまり、守り切ることが苦手で、1試合1失点以上は確実にするということになる。特に残留のためには重要となる後半戦に限ってみると、17試合で完封が一度もないという状況だった。これでは勝ち点を伸ばすのはなかなか難しい。
その理由として外せないのはGKとDFの出場試合数。GKに関しては、開幕戦の阿部(13試合)につづいて、シーズン途中からは安藤(10試合)、移籍加入のアレックス(12試合)と10試合前後で3人の選手が起用されている。調子のいい選手を起用するという監督の意図は判る。しかし、彼らのプレースタイルの違いに加え、アレックスは日本語に長けているとは言いがたいことから、最終ラインとの連携もやや乏しく感じた。DFに関しては遠藤の怪我が大きく影響したのは間違いないだろう。また、J2時代には遠藤のビルドアップ(縦パス)から攻撃のスイッチが入るというシーンも多く、遠藤の欠場は守備だけでなくチームに大きな影響を及ぼしていたのは間違いないだろう。
一方の攻撃に目を向けると、ゴール数が34と失点数(67)を大きく下回っていることが分かる。得失点-28は、前回のJ1(2010シーズンは31得点82失点で得失点-51)に比べれば健闘したといえるが、満足な数字とは言いにくい。というのは、もしもこの得点数が失点数にもう少し近い数字であれば、あと何試合かは苦しいゲームでも勝ち点を重ねることができた可能性がある。例えば、鳥栖は63失点しているが、54得点して12位(勝ち点46)、柏は59失点しているが、56得点して10位(勝ち点48)にいる。このことからも分かるように、失点が多少多くても得点力がある程度あれば、(勝ち点25よりも)もう少し上積みすることができたと思われる。
その意味では、湘南の攻撃陣の不振が目立つ。チーム最多は4ゴールで永木と高山。しかし、彼らはいずれも中盤の選手で、3得点の遠藤と大野はDFで、FWの選手の名前が見当たらない(シーズン途中でキリノが移籍したことも影響したかもしれないが…)。ちなみに、チーム内で2桁得点の選手が居なかったクラブは、大分、磐田、湘南、甲府、清水の5チーム。しかも、そのうち3クラブ全てが降格していることから、得点力(もしくは、エースストライカー)がいかに大事かというのが分かると思う。
話は少し脱線するが、湘南と同じシステムを採用しているチームを参考にしたい。J1 には浦和と広島というサンプルがある。浦和の場合は、失点が56もあるが、得点は66と攻撃力で相手を凌駕している。そして、広島に関しては失点29とリーグ最強の守備を持っている。攻撃の浦和、守備の広島と表現すると分かりやすいだろう。となれば、同じ[3-4-3]システムを採用する湘南としては、攻撃力に特化した浦和スタイルか、守備に特化した広島スタイルか、どちらかのテイストを湘南スタイルに少し混ぜ込んでいくということが次のステップに進む一番の近道と思われる。
まあ、今のチームスタイルからすると、守備に力を注ぐよりも、失点を気にせず攻撃で相手を凌駕する浦和スタイルのほうがチームにはフィットしやすそうだけども…
出場試合数に関して言えば、永木、高山、古林、菊池とチョウ監督が育成時代に指導してきたチルドレンたちが名を連ねる。この点は、いかにも湘南らしいといえる。監督の好むプレースタイル、意図や考えを育成年代から叩きこまれ、熟知するからこそ、チームにいちはやくフィットした。資金力に恵まれないクラブは自前で育てていくしか道は残されていないため、高い移籍金を払って選手を買うようなことができない以上、新卒やユースといったところからしっかり使える選手を出していかなければならない。特に湘南のような小クラブの宿命かもしれない。その意味では、この結果は当然とも言えるし、育成というクラブの方針がしっかりと出ていることを数字も証明している。
新シーズンはJ2で戦うことが決まっている湘南。こう言っては何だが、他クラブからは昇格候補として見られ厳しいマークにあうことだろう。それでも、J1クラブと比べれば相手の決定力や守備レベルは確実に下がるため、2013年のような守備に追われる試合展開は少ないだろう。しかし、現段階で既に主力の数人が移籍(もしくはレンタルバック)することが決まっている。特に高山、ハングギョン(はまだ報道だけだが)、大野の穴は大きい。その穴を埋めるのは誰か?現有戦力から出てくるのか、それとも新戦力を獲得するのかは分からないが、GKを含めたセンターラインの形成は急務だろう(と書いていたら、愛媛よりGK秋元の加入と、新年早々にFC東京よりDF丸山加入のリリース)。しかし、その穴を埋めることができればJ2での結果もしっかりと付いて来るだろう。また、新人には期待できそうな選手が多いので、彼らの活躍が楽しみでもある。
◆MVP
永木 亮太
出場停止となった試合以外の全てで先発し、出場試合、出場時間、ゴールの3部門でチームトップを記録。ボランチを主戦場に攻守で獅子奮迅の働きをした。いまやチームの顔として誰もが納得のプレーをしている。J1では守備に追われるようなゲーム展開も多く、自陣へと走るシーンも多かった。しかし、そこからの切り替えは素早く、時には相手ゴールエリアまで詰めていくスタイルは精神的にもタフでなければできないだけに、そうした手を抜かない勤勉なスタイルには頭がさがる。しかも、試合展開によってはトップ下に入って攻撃面でも変化を与えるなど、攻守で特徴を発揮。守れるだけで無く、90分走れて、攻撃もできる、三拍子揃った万能選手といえるだろう。ただ、個人的にはもう少しシュートへの意識を上げることを注文したい。ミドルレンジであってもコースが見えたら狙う。そうすれば、パスの選択肢も増えるし、プレーの幅も今以上に広がる。そして、個人としてもチームとしてもゴール数はもっと増えるように思う。体重の乗った重みのあるシュートは、枠内にさえ入ればGKのファンブルも狙えるだけに貢献度はもっと高くなるだろう。