本当に20は危険なスコアなのか?

 

92回全国高校サッカー選手権大会 決勝 113日@国立

 

富山第一(富山) 32 星稜(石川)

 

得点者:

【富山】高浪奨(後半42分)、大塚翔(後半48分)、村井和樹(延長後半9分)

【星稜】寺村介(前半34分)、森山泰希(後半25分)

 

01

史上初めて北信越勢同士の対戦となった決勝は、最後の国立となる舞台で見応えのある試合を提供してくれた。今大会13得点という富山第一に対するは、無失点で勝ち進んできた星稜。まさに最強の矛と最強の盾の対決という感じだろうか。試合は、そのスタイル通り立ち上がりから富山第一の猛攻が星稜ゴールに迫る。しかし、GK近藤大河の好プレーもあり得点は生まれない。すると、押し込まれていた星稜が幸運にもPKのチャンスを得ると、10番の寺村介がしっかり決め先制点を得る。これが34分。

 

02

追いつきたい富山第一の攻撃は後半も弱まる素振りを見せない。しかし、星稜はしっかりとした守備からカウンターで好機を見出す。後半25分、中盤でボールをカットしたところから、僅か2つのパスでゴール前に迫ると最後は2年生FWの森山泰希が決めて2点差とする。今大会これまで無失点の星稜にとっては大きなアドバンテージ。この時点で誰もが星稜の勝利を疑わなかっただろう。

 

12

時計の針は進み、後半も残すところも僅か。ここから富山第一が猛反撃を見せる。後半42分、何度も狙っていた左サイドからの崩しで仕掛けると、最後は交代出場していたFW高浪奨が合わせ1点を返す。しかし、まだ星稜が優位であることに変わりは無かった。

 

22

第四の審判から3分のロスタイムが表示された。しかし、富山第一はまだ諦めない。もう少しで試合が終わる。誰もがそう思った47分、PE内に攻めこむとファールを受けPKを獲得。時間的にも決めれば同点、そして延長戦が待っている。しかし、外せば即負けというプレッシャーの中、これを大塚翔がしっかり決めて延長へ。

 

32

延長に入ると2点差を追いついた富山第一のほうに勢いがあった。勝負がついたのは延長後半9分。味方すらもビックリしたというロングスローのボールに対し、村井和樹が中央で合わせて遂に逆転。表示されたロスタイムは1分あったが、このまま富山第一が逃げ切り優勝を飾った。

 

 

中継でも使われた「20は危険なスコア」というサッカー界の格言


ザッと試合経過をまとめてみたけど、こんな感じかな。正直、富山第一がロスタイムに追いついた瞬間、これは延長でも決着がつかずにPK戦だろうと予想していた。しかし、その予想を裏切るゴールで富山第一が勝利。大逆転での優勝は満員の国立も湧いたことだろう。

 

そこで、頭をよぎったのが「20は危険なスコア」というサッカー界の格言。

 

実況のアナウンサーも言っていましたが、サッカーの試合ではよく使われる格言です。しかし、今回のように逆転、もしくは引き分けになる試合(Jリーグやプ大学のリーグ戦では勝敗を付けないため)は少ないというのが実際のところ。しかも、75分を過ぎた時点で2点差がある場合(今日の試合に限れば試合終了まで残り3分という時間)、その殆どで先制しているチームが優位にあるというのを現場でも感じています。というか、残り3分からの大逆転なんてのは、そうそう見られるものではない。

 

ちなみに、2013年シーズンではJ1の試合で2得点以上あった試合が174試合。

そのうち20(もしくは02)となった試合での勝敗は、2点差をつけたチームの2264敗。

31(もしくは13)となった試合での勝敗は、11勝1敗

42(もしくは2-4)のケースでは40敗。

打ち合いの末に31、もしくは42になればほぼ勝利は確実。2点差から一度は追いつかれることがあっても、ほとんどの場合は2点差をつけたチームが勝利を掴み、逆転負けをするパターンは僅かに5回しかない。勝率にして約77パーセントとかなり高いことがわかる。

 

ちなみに、2012年シーズンに関しては、Jスポーツの土屋ディレクターがもっと詳しく分析して、ブログでも書いているのでそちらを参考にして下さい。

http://www.jsports.co.jp/football/jleague/blog/staff-blog/2j1/

 

このことから、2点差は危険なのか?という疑問に対しての答えは、「殆どの場合は確実に勝てる。安全圏です」と答えるのが正しい。同点で引き分けになる可能性や、逆転負けとなる可能性は3割以下とかなり少ない。また、少なくとも75分頃までに1失点を喫してなければ勝利の可能性は殆ど掴んだといっていい。それは2012年のデータから出ている。

 

でも、今回のように高校選手権という、こうした注目度の高い大会、しかも決勝で2点差からの逆転勝利となればインパクトは大きい。そして、そういったインパクトの大きさが多くの人の頭にイメージとして残っているため、「20は危険なスコア」と言われるのではないかという結論に至る。

 

蛇足だが、海外でも有名な大逆転がある。こっちは2点差どこの話ではない。

UEFAチャンピオンズリーグ2004-05シーズンの決勝戦で、ACミラン対リヴァプールFCの試合だ。前半で3点差をつけたミラン。誰の目にも優位なのは明らかだった。しかし、リヴァプールが後半に入るとシステムを変更し捨て身の攻撃に出た。その結果、3得点を奪って同点に追いついて延長戦に。しかし、ここでも決着はつかずPK戦へともつれ込む。結局、最後はリヴァプールが逆転勝利を収めた。世界の頂点たる大会でもこうした試合がある。