終わったことをグダグダと蒸し返すようで恐縮ですけど…敢えて書きます。


 

差別的な横断幕により、最終的にJFAから下されたのは「無観客試合」だった。

 

http://www.j-league.or.jp/release/000/00005691.html

 


その後、ゴール裏のサポーター11団体が解散を申し出た。


http://www.urawa-reds.co.jp/clubinfo/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%81%AE%E7%9A%86%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%B8/

 

 

さて、先日の無観客試合を終え、清水のホームゲームを1試合取材し、改めてこの処分に疑問を持った。いや、持ってしまったというのが正しいかもしれない。というのも、何故そもそも無観客試合だったのだろうか。何故、勝ち点剥奪では駄目だったのかという疑問が時間を経るに従い強くなっている。

 

無観客試合は浦和に対してのペナルティとしては十分に重い決定であることは間違いない。実際、1試合分の収益に換算して数億円規模での損害となったので、クラブに対しても重い制裁が与えられたと思う。そして、リンクにあるようにサポーターも自ら重い処分を下した。無観客試合の後、こうした報道がされたことを考えても、今回の件は大変重い、歴史的な処分だったのは間違いない。しかし、では当該チーム以外には何も影響や被害を出さなかったのか?といえば答えはノーだった。実際、清水はクラブとして明らかに大きな被害を受けた。アイスタで開催されたパブリックビューイングに関してはこのブログでも書いたが、金額的な損失は勿論、その他にも試合を楽しみにしていたサポーターにも損害を与えたし、実際に試合に出た選手たちにもある意味での被害はあったと思っている。

 

そして、更にもう少し範囲を広げて考えてみる。

 

埼玉スタジアムには普段からお店を出している方々もいる、そして映像スタッフや場内アナウンスなど運営に関わる人達(もしかしたらクラブから金銭的な保証はされているかもしれないし、もしものためにスタンバイしていた人たちも居たので厳密には損得を言うのは難しいけれども)も当然居た。

 

もっと先を見る。売店で売っているお弁当類の仕入れ先、鉄道会社やタクシー会社、駅前のビルに入っているコンビニ。ちょっと考えただけでかなり出てきた。また試合後に関しても、勝利の美酒、敗戦のやけ酒など飲んで帰る人も多いことが考えられるので周辺の飲食店でお金が動かなかった可能性もある。子供さんがいれば近くのイオンモール浦和美園店で帰りになにか買い物しに行こうと思っていた親子もいたかもしれない(ちょっと無理やりのこじつけかな)。でも、そう考えると売上に影響が出ている場所はもっと多いかもしれない。実際、当事者の方々は分かっていると思うが、試合がある日に比べ売上が減ったというところは間違いなく多いだろう。そうなると、それぞれが数万円から数十万円、数百万円規模で影響が出ているはずだ(逆に無観客試合によって、試合を見るために集まった居酒屋とか、スポーツバーなど、いつも以上の利益を得たという場所や施設が全く無いわけではないと思うが…)。これをもって、日本サッカー協会が下した決定は本当に妥当であり正しかったのだろうかと考えると、やっぱり疑問が残る。当該チームがペナルティを受けるのは当然だ。がしかし納得するのは…という感じだ。

 

 

そして、忘れては行けないことがある。今回の決定により、日本サッカー界は歴史に1つの前例を作ったことになる。裁判などでも過去の判決が前例となり裁定が下されることになるが、今後、何がしかの場所、スタジアムなどで人種差別的な発言や提示がされた場合、それに対する処分は無観客試合が妥当とされる可能性は極めて高いだろう。しかし、その場合には前述したように当該者クラブ(もしくはサポーター)以外に対する影響があまりにも大きいように感じた。これが浦和ではなく、別のチームであった場合、カテゴリーが違った場合など、その影響は千差万別で、反応もいろいろだとは思うが、場合によってはもっと深刻な影響が出る可能性がある。

 

そして、もしこれが2ステージ制を導入された2015シーズン以降だった場合を考えると、二度と勝ち点剥奪という処分は下せなくなりそうだということが分かる。何故ならば、前後2ステージ制での勝ち点剥奪(例えば1試合分相当の3から、3試合分の9程度でも)は、タイトル争い(順位)への影響が大きすぎるためだ。そうなると、今後は前例と同様に無観客試合の判断が妥当ということになるだろう。

 

しかし、では通年制のJ2J3で同様の事件が起きた場合も同じ無観客試合という処分で落ち着くのだろか。いや、悪質さの度合いによっては勝ち点剥奪という処分が検討されないのだろうか。そもそも、もう二度とこういう処分が下されるような事件は起きてほしくないのだが、もしものことを考えると、協会は随分と甘い決断をしたように感じてしまう。

 

そして、無観客試合というペナルティは当該者以外への影響が大きい。そう考えると、なんとも納得しにくい処分だったのではないかという思いがもたげてきた。というか、そもそも関係のない人たちにまで被害が及ぶのは考えものだ。こうして今更蒸し返すのもなんだが、どうにも納得できにくい処分だったのではないかという思いが、スタジアムから帰路につくサポーターを見ていて出てきてしまった。罪のない人たちへのことを考え、最も影響の少ない処分や方法を考えて欲しい。

 

最後に、唯一の収穫は実際にプレーした選手たちが、サポーターの応援がどれだけ自分たちの力になるか、コールや声援が自分たちにとってどれだけ大切だったのかという再確認にはなったと思う。しかし、それは経験しなくても良いはずのことであり、普段の試合でも十分に理解できていることだと思うが、今回の悲しい事件の中で唯一の光明、救いであることには違いないと思う。


(C) 2014 tomo2take